6月に公表された「骨太方針2021」のポイントをおさえておきましょう
2021年07月28日
行政舵取りの「羅針盤」とも言える「骨太方針2021」が公表
2021年6月18日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2021 日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」、いわゆる“骨太方針2021”。
「感染症に対し強靭で安心できる経済社会の構築」を基盤に、前述の通り4つの領域が国の意志として明確に示されていることが強く印象に残ります。今回は我々の主要領域である「介護」に関する新たな言及はそれほど多くは為されておらず、敢えて特筆点を挙げるとすれば、再確認という意味合い含め、下記の3点となるでしょうか。
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(1)「認知症施策推進大綱」に基づく施策を実施するとともに、成年後見制度の利用を促進する。ヤングケアラーについて、早期発見・把握、相談支援など支援策の推進、社会的認知度の向上などに取り組む。性的指向、性自認に関する正しい理解を促進するとともに、社会全体が多様性を受け入れる環境づくりを進める。
(2)「人生100年時代に対応した社会保障制度を構築し、世界に冠たる国民皆保険・皆年金の維持、そして持続可能なものとして次世代への継承を目指す。2022年度から団塊の世代が75歳以上に入り始めることを見据え、全ての世代の方々が安心できる持続可能な全世代型社会保障の実現に向けた取組について、その実施状況の検証を行うとともに、その取組を引き続き進める。その際、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築する観点から、給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、保険料賦課限度額の引上げなど能力に応じた負担の在り方なども含め、医療、介護、年金、少子化対策を始めとする社会保障全般の総合的な検討を進める」
(3)一人当たり介護費の地域差縮減に寄与する観点から、都道府県単位の介護給付費適正化計画の在り方の見直しを含めたパッケージを国として示し、市町村別にその評価指標に基づき取組状況を見える化する。また、調整交付金の活用方策について、第8期介護保険事業計画期間における取組状況も踏まえつつ、引き続き地方団体等と議論を継続する。
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これらのポイントをしっかりと押さえつつ、事業運営に何らかのエッセンスを反映させていく思考が求められてくることは当然のことかと思いますが、私見ながら、上記内容に加え、国が掲げた4領域の中で1番目に挙げられている“グリーン”というキーワードは今後、我々介護領域に携わる人間にとっても決して無視することが出来ないものになってくるのではないか?と最近、特に強く感じています(=換言すれば、「グリーン×介護」「介護事業の推進に“グリーン”のエッセンスを上乗せしていく」ということで、新たな成長・進化の可能性を見出すことが出来るかもしれない?)。
そのような観点のもと、今回は上記介護領域の内容に加え、“グリーン”領域についてどのような言及が為されているのか?について確認してまいりたいと思います。
「骨太方針2021」で採り上げられている“グリーン”の概要とは
では、早速、中身に移ってまいりましょう。
今回は大きく2つのポイントから、特に頭に残しておいた方が良いと思われる内容を抜粋し、箇条書きにて記載させていただきます(下記)。特に重要と思われる箇所は太字としていますので、以下、ご確認下さいませ。
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(1)グリーン成長戦略による民間投資・イノベーションの喚起
・産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長と国民生活のメリットにつなげていくため、グリーン成長戦略に基づき、あらゆる政策を総動員し、洋上風力、水素、蓄電池など重点分野の研究開発、設備投資を進める。
・グリーンイノベーション基金による野心的なイノベーションに挑戦する企業への10 年間の継続支援、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の活用等、企業の脱炭素化投資を後押しするとともに、新技術の導入に資する規制改革や国際標準化に取り組む。
(2)脱炭素化に向けたエネルギー・資源政策
・2050 年カーボンニュートラル及び2030 年度の温室効果ガス排出削減目標(=2013 年度比 46%減)の実現を前提に、「エネルギー基本計画」を見直す。
・電力部門の脱炭素化に向け、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、再生可能エネルギーに最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促す。
・必要な送配電網・電源への投資を着実に実施し、コスト効率化や、分散型エネルギーシステムなど真の地産地消にも取り組むよう促す。
・火力については、(中略)水素・アンモニアによる発電を選択肢として最大限追求する。
・原子力については、可能な限り依存度を低減しつつ、安全最優先の原発再稼働を進めるとともに、実効性ある原子力規制や、道路整備等による避難経路の確保等を含む原子力防災体制の構築を着実に推進する。安全性等に優れた炉の追求など将来に向けた研究開発・人材育成等を推進する。
・自動車については、EV充電設備や水素ステーションの整備等を進め、普及が遅れている電動化を戦略的に推進するとともに、SSの総合エネルギー拠点化等を進める。
・住宅・建築物については、規制的措置を含む省エネルギー対策を強化し、(中略)森林吸収源対策を強化する。
・「地域脱炭素ロードマップ」に基づき、地域・暮らしの分野における地方自治体や国民の取組を推進し、2030年までに脱炭素先行地域を少なくとも100 か所創出するとともに、全国で重点対策を実施し、脱炭素ドミノを起こす。また、プラスチック資源循環を始め循環経済への移行を推進する。
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国策の“風”を読み取り、早め早めの準備を
以上、「骨太方針2021」より、介護業界に直接関係のあるポイント、及び間接的に関係してくるものの中で今までテーマとして採り上げてこなかった「グリーン」というキーワードについて抜粋してお伝えさせていただきました。
耳慣れない言葉が羅列されており、理解しづらさを感じる方もいらっしゃるかと思いますが、介護事業者としては「グリーンイノベーションを巻き起こす“主体者”」というよりも、「イノベーションの結果として生成された“脱炭素エネルギー”を如何に取り込み、活用し、地域にプラスのインパクトを与えていくか(or自社のブランディングに相乗させていくか)」という観点で本テーマを見つめていくことが賢明ではないかと思われます(勿論、イノベーションの“主体者”として取り組む法人様がいらっしゃるなら、それはそれで素晴らしいと思いますが)。
「社会資源」という意味においても、もしくは「雇用」と言う観点においても、地域インフラの相当割合を形成している福祉事業者が今回のような(領域が異なる)国策課題に関心を持ち、相乗効果を検討することは、福祉事業単独だけでは実現することが出来なかった新たなインパクトを地域で創出する事にもつながるかもしれません(少々次元は異なりますが、“農福連携”という言葉が生まれたように)。
その意味においても地域を支えている介護事業者としては是非、前述のような観点を持ち、今回のような情報に対しても「自社として適応・取り込める内容はないか?」と頭を働かせていくことを強くお勧めする次第です。
本テーマを含め、今後、我々としてもより有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。
※上記内容の参照先URLはこちら
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「経済財政運営と改革の基本方針 2021日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」(骨太方針2021)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2021/decision0618.html
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