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規制改革推進会議での議論をウォッチしておきましょう
2022年02月28日

2月17日(木)、規制改革推進会議が「これまでの議論のとりまとめ」を公表

国として更なる発展を目指すべく、文字通り“規制改革”を主要テーマに様々な切口からの議論が展開されている「規制改革推進会議」。そのような中、医療・介護WG(ワーキンググループ)で議論されていた「先進的な特定施設(介護付き有料老人ホーム)の人員配置基準」について、ここまでの議論の取りまとめ報告書が2月17日(木)に公表されました。

今回は本報告書のポイントを抜粋して確認・整理することで、国としての最新情報のキャッチアップを進めてまいります。




「先進的な特定施設(介護付き有料老人ホーム)の人員配置基準について」議論のポイントとは

それでは早速、内容に入ってまいりましょう。
先進的な特定施設(介護付き有料老人ホーム)の人員配置基準について、先ずは「委員・専門委員等の意見」を確認してまいります。(重要と思われる部分は太字にしています)。

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【委員・専門委員等の主な意見】
-デジタルテクノロジーの活用により人員配置基準を特例的に柔軟化することで、介護施設に関わる経験から、むしろ現場の負担が軽減され、介護の質が上がる可能性もあるが、介護の質の低下や職員負担増が生じないことを実証する必要がある。
-介護職員の負担の軽減に加えて、給与増の原資も捻出できるという、一つの方向性を示す提案である。
-特例を適用した事業者について、配置人員数が少ないことなどを理由として、介護報酬が減額される場合、本特例を活用し介護職員の処遇改善を図るインセンティブが減殺されることとなるため、適切な措置を講じる必要がある。
-施設ケアがひっ迫するのは、平時ではなく急変時。日々のケアを薄く浅く軽減するよりも急変を起こさない、あるいは起こした時の対応が重要。今回の提案者の取組では、日常の管理によってある程度急変が予測でき、予期的な対処ができる点が素晴らしく、他の事業者もトライする価値がある。
-一部の意欲的な事業者において成功事例もでてきており、人員配置を基準化せず、できるところは少ない人材でやってもいいという選択はあるべき。ただし、現場の懸念もよく理解できるので、現場の不安をきっちりと払拭することが絶対条件。
-これだけでは介護人材不足への効果は限定的であり、在宅介護も含めた抜本的な改革のビックピクチャーが必要。

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個人的には「配置人員数が少ないことなどを理由として、介護報酬が減額される」という視点があることに驚きを覚えた次第です。
それでは続いて、「関係団体の方々の意見」を確認してまいりましょう(下記)。

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【関係団体の主な意見】
(全国老人福祉施設協議会)
-介護は高度な対人サービスであり、モノづくりで培われた生産性向上ノウハウはそのまま当てはまらない。
介護職員の削減は、ケアの質の低下、職場環境の悪化につながる可能性が高く、生産性向上は単純な人減らしを目的としたものであってはならない。
生産性向上は、事業者の利益ではなく、利用者が受けるケアの質が高まること、職場環境改善(職員の処遇改善、職場の魅力アップ)で実を結ばなければならない。
-特殊な条件のもとで成立する基準を、介護施設一般に適用すべきではない。

(日本介護福祉士会)
-実証における効果検証作業においては、以下の点の確認を求める。
 ・いかに介護サービスの質の向上に結びついているか
 ・具体的にどのような介護業務が効率化されるのか
 ・介護職員の新たな業務負荷に結びついていないか
 ・新たなリスク管理の必要性を生み出していないか(緊急時、災害時) 等

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即ち「慎重に検討すべきだ」ということだ、と認識できるかと思われます。

以上2方向からの意見・視点のもと、本テーマに対する考え方として、以下の整理が為された次第です。

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【人員配置基準の柔軟化に関する考え方】
仮に、実証結果を踏まえて、社会保障審議会介護給付費分科会において議論を行い、人員配置基準の柔軟化に関して、問題がないと認められる場合は、早期に制度化を行う必要がある。その際、以下の点への留意が必要。
-介護施設は、運営事業者や施設の規模、利用者の要介護度等によって必要人員数は様々であるため、現行の人員配置基準を施設の種類等によらず一律に変更することは現実的ではない。このため、先進的な取組を行う事業者について、人員配置基準の特例を認め、当該取組を順次、日本全国へ展開していくことが妥当なアプローチである。
-今回の事業者提案は、特定施設のうちの有料老人ホームを対象とするものであるが、先進的な取組は特別養護老人ホームなど他種の施設運営者においても広く見られることから、「特例」アプローチは、特定施設以外の介護施設についても、適用可能である必要がある。
-特例への「挑戦」インセンティブが減殺され、介護職員の処遇改善が図られないこととならないよう、特例が認められた事業者についての介護報酬の切下げを回避する必要がある。

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「未来の介護現場の在り方」に対する一つの示唆となる可能性

以上、簡易ながら、今回の取りまとめの概要についてお伝えさせていただきました(ちなみに上記テーマの提案者は皆様ご存知の「損保ケアネクスト社」です)。

結論として今後は、

【1】介護人材不足への対応を検討するに当たっては、「介護の質の維持」と「介護職員の負担軽減・処遇改善」が最も重要な観点となること
【2】この点、ビッグデータ解析、センサーなどの ICT 技術の最大活用、介護補助職員の活用等によって、特例的により少ない人員で介護の質を維持し、かつ、介護職員の負担軽減・処遇改善を両立させるとの今回の提案は、今後の介護人材不足の解決に向けた有力な一つの方策となる可能性があること
【3】このため、今後の厚生労働省における実証を通じて、実際に介護の質が維持されること及び介護職員の負担増につながらないことが客観的に検証される必要があること

上記3点の視点のもと4月以降から実証実験が始まり、次期法改正(2024年度)に向けた提言が検討されてくるものと思われます。

先ずは特定施設から、ということで、どこまでの汎用度を以て検証・議論されるかは今後の実験結果次第になろうかと思われますが、介護現場の未来、という意味においても是非、注目すべき情報ではないかと感じる次第です。

我々としても今後、引き続き更なる情報収集を行い、新たに有益な情報が入り次第、皆様へ迅速にお伝えするよう努めてまいります。

※上記内容の引用元資料はこちら

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/committee/220217/220217_general02.pdf





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