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人財確保・定着関連の加算(抜粋)について確認しておきましょう
2024年01月30日

各サービスの報酬改定内容・報酬単価が確定

2024年1月22日(月)に開催された、介護給付費分科会。同会の中では、事業者にとって最大の関心事である「各サービスの改定内容(加算詳細含む)・報酬単価」が詳細に示されました。

各社、取り組まれているサービスが異なるものの、かと言って全サービスの詳細を確認することは紙幅の関係上難しい中、今回は中でも多くの皆様にとって関わりが深いであろう「人財確保・定着」に強く関連する可能性が高い内容について抜粋・確認してまいりたいと思います。



人財確保・定着に関連する改定内容とは(抜粋)

では、早速、中身を確認してまいりましょう。
本内容は22日に公開された資料「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」の中の項目「良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」に的を絞り、そこから大きく3つのテーマを抜粋・確認してまいります。

先ずは1つ目のテーマ、「介護職員の処遇改善」についてです。

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概要
○ 介護現場で働く方々にとって、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう加算率の引上げを行う。
○ 介護職員等の確保に向けて、介護職員の処遇改善のための措置ができるだけ多くの事業所に活用されるよう推進 する観点から、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算について、現行の各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた4段階の「介護職員等処遇改善加算」に一本化を行う。
※一本化後の加算については、事業所内での柔軟な職種間配分を認める。また、人材確保に向けてより効果的な 要件とする等の観点から、月額賃金の改善に関する要件及び職場環境等要件を見直す。 【告示改正】

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単位数
下記の表をご覧ください。

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(注)令和6年度末までの経過措置期間を設け、経過措置期間中は、現行の3加算の取得状況に基づく加算率を維持した上で、今般の改定による加算率の引上げを受けることができるようにすることなどの激変緩和措置を講じる。

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算定要件等
○ 一本化後の新加算全体について、職種に着目した配分ルールは設けず、事業所内で柔軟な配分を認める。
○ 新加算のいずれの区分を取得している事業所においても、新加算Ⅳの加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てることを要件とする。
※ それまでベースアップ等支援加算を取得していない事業所が、一本化後の新加算を新たに取得する場合には、収入として新たに増加するベースアップ等支援加算相当分の加算額については、その2/3以上を月額賃金の改善として新たに配分することを求める。

下記の図をご覧ください。

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一本化に伴い、かなり大胆な数値が設定されたかのように感じるのは私だけではないかもしれません。特に訪問介護については人財確保に苦しんでいる状況に対する危機感の表れとして「最大24.5%」となる等、かなり大きな加算率が掲げられています。勿論、本加算の活用だけで人財確保が容易に出来るようになる、ということでは決してない訳ですが、それでも有効活用できる事業所とそうでない事業所とでは、一定の差が生まれてくる可能性もあるかもしれないな、と感じた次第です。

続いて、2つ目のテーマに移ってまいりましょう。「介護ロボットやICT等のテクノロジーの活用促進」についてです。

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概要
○ 介護現場における生産性の向上に資する取組の促進を図る観点から、介護ロボットやICT等のテクノロジーの導入後の継続的なテクノロジーの活用を支援するため、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の開催や必要な安全対策を講じた上で、見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入し、生産性向上ガイドラインの内容に基づいた業務改善を継続的に行うとともに、一定期間ごとに、業務改善の取組による効果を示すデータの提供を行うことを評価する新たな加算を設けることとする。 【告示改正】
○ 加えて、上記の要件を満たし、提出したデータにより業務改善の取組による成果が確認された上で、見守り機器等のテクノロジーを複数導入し、職員間の適切な役割分担(いわゆる介護助手の活用等)の取組等を行っていることを評価する区分を設けることとする。 【告示改正】

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単位数
下記の図をご覧ください。

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算定要件等
【生産性向上推進体制加算(I)】(新設)
○ (II)の要件を満たし、(II)のデータにより業務改善の取組による成果(※1)が確認されていること。
○ 見守り機器等のテクノロジー(※2)を複数導入していること。
○ 職員間の適切な役割分担(いわゆる介護助手の活用等)の取組等を行っていること。
○ 1年以内ごとに1回、業務改善の取組による効果を示すデータの提供(オンラインによる提出)を行うこと。
注:生産性向上に資する取組を従来より進めている施設等においては、(II)のデータによる業務改善の取組による成果と同等以上のデータを示す等の場合には、(II)の加算を取得せず、(I)の加算を取得することも可能である。
【生産性向上推進体制加算(II)】(新設)
○ 利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の開催や 必要な安全対策を講じた上で、生産性向上ガイドラインに基づいた改善活動を継続的に行っていること。
○ 見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入していること。
○ 1年以内ごとに1回、業務改善の取組による効果を示すデータの提供(オンラインによる提出)を行うこと。

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(※1)業務改善の取組による効果を示すデータ等について
○ (I)において提供を求めるデータは、以下の項目とする。
 ア 利用者のQOL等の変化(WHO-5等)
 イ 総業務時間及び当該時間に含まれる超過勤務時間の変化
 ウ 年次有給休暇の取得状況の変化
 エ 心理的負担等の変化(SRS-18等)
 オ 機器の導入による業務時間(直接介護、間接業務、休憩等)の変化(タイムスタディ調査)
○ (II)において求めるデータは、(I)で求めるデータのうち、アからウの項目とする。
○ (I)における業務改善の取組による成果が確認されていることとは、ケアの質が確保(アが維持又は向上)された上で、職員の業務負担の軽減(イが短縮、ウが維持又は向上)が確認されることをいう。

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(※2)見守り機器等のテクノロジーの要件
○ 見守り機器等のテクノロジーとは、以下のアからウに掲げる機器をいう。
 ア 見守り機器
 イ インカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器
 ウ 介護記録ソフトウェアやスマートフォン等の介護記録の作成の効率化に資するICT機器(複数の機器の連携も含め、データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するものに限る。)
○ 見守り機器等のテクノロジーを複数導入するとは、少なくともアからウまでに掲げる機器は全て使用することであり、その際、アの機器は全ての居室に設置し、イの機器は全ての介護職員が使用すること。なお、アの機器の運用については、事前に利用者の意向を確認することとし、当該利用者の意向に応じ、機器の使用を停止する等の運用は認められるものであること。

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上記同様、あくまで個人の感覚ではありますが、導入に向けた投資であったり、浸透の為にかかる労力であったり等に見合う加算額では全くないな、というのが率直なところです。ただ、今回はあくまで「意識付け」としての位置づけであると理解するのが適切であると思われ、加算額が少ない=テクノロジー導入を見送る、という判断は未来にとっては大きなマイナスにつながりかねないものと思われます。その意味でも有益なテクノロジー機器の導入は加算云々に関わらず“大前提”と位置付け、些少ながらもそれらに対する支援策が設定された、と好意的に受け取ることが重要かもしれないな、と感じた次第です。

続いては最後、3番目のテーマ、「外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いの見直し」についてです。

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概要
○ 就労開始から6月未満のEPA介護福祉士候補者及び技能実習生(以下「外国人介護職員」という。)については、日本語能力試験N1又はN2に合格した者を除き、両制度の目的を考慮し、人員配置基準への算入が認められていないが、就労開始から6月未満であってもケアの習熟度が一定に達している外国人介護職員がいる実態なども踏まえ、人員配置基準に係る取扱いについて見直しを行う。
具体的には、外国人介護職員の日本語能力やケアの習熟度に個人差があることを踏まえ、事業者が、外国人介護職員の日本語能力や指導の実施状況、管理者や指導職員等の意見等を勘案し、当該外国人介護職員を人員配置基準に算入することについて意思決定を行った場合には、就労開始直後から人員配置基準に算入して差し支えないこととする。【告示改正】
その際、適切な指導及び支援を行う観点、安全体制の整備の観点から、以下の要件を設ける。
 ア 一定の経験のある職員とチームでケアを行う体制とすること。
 イ 安全対策担当者の配置、指針の整備や研修の実施など、組織的に安全対策を実施する体制を整備していること。併せて、両制度の趣旨を踏まえ、人員配置基準への算入の有無にかかわらず、研修又は実習のための指導職員の配置や、計画に基づく技能等の修得や学習への配慮など、法令等に基づき、受入れ施設において適切な指導及び支援体制の確保が必要であることを改めて周知する。

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算定要件等
次のいずれかに該当するものについては、職員等の配置の基準を定める法令の適用について職員等とみなしても差し支えないこととする。
・ 受入れ施設において就労を開始した日から6月を経過した外国人介護職員
・ 受入れ施設において就労を開始した日から6月を経過していない外国人介護職員であって、受入れ施設(適切な研修体制及び安全管理体制が整備されているものに限る。)に係る事業を行う者が当該外国人介護職員の日本語の能力及び研修の実施状況並びに当該受入れ施設の管理者、研修責任者その他の職員の意見等を勘案し、当該外国人介護職員を職員等の配置の基準を定める法令の適用について職員等とみなすこととしたもの
・ 日本語能力試験N1又はN2に合格した者

下記の図をご覧ください。

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非常に曖昧な内容ではあるものの、算定要件に一定の弾力性を持たせたこと自体は評価すべきことかもしれません。こちらも上記同様、個人の感覚ではありますが、今回の要件緩和によって果たしてどれだけの外国人人材が人員基準内として該当可能になるか?という点では正直、あまり大きな期待は持てないものの、「未来に向け、更に踏み出した一歩」という意味では興味深い改定であるように感じるところです。





議論のプロセスから関心を持って情報を追いかけておくことが大切

以上、数ある改定事項の中から今回は「人財確保・定着」にフォーカスし、更に3点に集中して概要をお伝させていただきました。22日の介護給付費分科会で示された資料については各事業者にとって最大の関心事であろうこと含め、恐らく多くの事業者の皆様は既に関連する内容について目を通されていることかと思います。

一方、まだ詳細確認を行う時間が取れていない、もしくは「資料が多すぎてどこからどう読めば効率的なのかが分からない」とお感じになる方については、是非、下記にリンク先を掲載している資料「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」を辞書的に活用しつつ、そこから更なる理解・深掘りへと展開されることをおススメする次第です。

最後に、毎回申し上げていることではありますが、介護経営者としては「こういう改定で着地した」という現象面だけでなく、「何故このような内容に着地したのか?」「この変更・新設の意図するところは何か?」という問いのもと、短期・中長期の視点を織り交ぜながら俯瞰的に理解を進め、対応策を検討していく必要があると言えるでしょう。その意味でも是非、早めに内容確認の上、各改定決定事項の裏にある“意図”について思考を深めることをおススメする次第です。

私たちも今後、有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。


※本記事の引用元資料「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」はこちら

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001200256.pdf

※2024年1月22日 介護給付費分科会の全体資料はこちら

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37407.html




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