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2024年4月に行われた「財政制度分科会」の内容を確認しておきましょう
2024年04月30日

財務省としての意見を発信する「財政制度分科会」が開催

年度が変わり、事業者・行政共に法改正への対応に忙しい2024年4月。そんな折、財政的観点から「社会保障関連分野においても聖域をつくらず、抜本的改革に着手すべき」と声高に主張する“財政制度分科会”が4月16日に開催されました。

“国の金庫番”とも呼べる財務省が介護業界に対し、どのような改革案を突き付けているのか?今回は同省が作成した資料「こども・高齢化」の中で特に介護事業者に関連するであろう論点の中から抜粋し、特に注視・認識しておいた方が良いと思われる4点の内容を採り上げ、お届けしてまいります。




財政制度分科会で採り上げられた「論点」「改革の方向性(案)」とは

では、早速、中身に移ってまいりましょう。ここでは本分科会で示された資料から抜粋・紹介する形で進めてまいります。

先ずは、財務省の基本姿勢を示している、「介護の改革の必要性」という資料についてです(認識しておいた方が宜しい箇所を太字で強調しておりますのでご確認下さい)。

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○ 足元では、年齢別の要介護認定率は低下しており、一人当たり介護給付費も減少している。ただし、 要支援も含めた90歳以上の要 介護認定率は過去からあまり変わらずに高止まりしている。
○ 他方で、将来的には、 65~74歳、75~84歳の人口は減少していくのに対して、要介護認定率や一人当たり介護給付費が急増する85歳以上の人口は今後も右肩上がりで増加していくことが想定される。

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※下記グラフも合わせてご覧ください。

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上記データを見る限り、確かに2015年以降の改正・改定を経て「年齢別の要介護認定率は低下」「一人当たり介護給付費も減少」していることが明確に見て取れます(とはいえ、因果は何とも分からないところではありますが)。

とはいえ上記指摘の通り、85歳以上の人口が今後ますます増えることは間違いなく、社会保障費の伸びを適正範囲でおさえていくためにも、「自立支援・重度化防止や生活の質向上の観点から介護予防の取組を進め、要介護認定率を引き下げていくとともに」「介護保険の給付と負担の見直しを遅滞なく着実に進めるべき」というのが財務省としての大枠での見解だ、ということをあらためて認識しておくべきでしょう。

では、続いて、「高齢者向け施設・住まいにおけるサービス提供の在り方」についてです。本テーマについては先ず、大きく5つのポイントについて言及が為されています。

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○ 高齢者向け施設・住まいについては、従来からの施設である「特養」のほか、「 (介護保険サービスの一類型である【特定施設入居者生活介護】の指定を受ける)介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」や、「(【特定施設】の指定を受けない)住宅型有料老人ホームやサ高住」の建設数も増加。

○ 「特養」については2015年より原則として入所者が要介護3以上に限定。他方で、「介護付き有料老人ホーム等」に加えて、自立して生活できる軽度者向けの住まいとして「住宅型有料老人ホームやサ高住」の整備が進められたが、足元では「住宅型有料老人ホームやサ高住」においても、要介護度3以上の入居者が約3~5割を占めており、一部のホームは特養と同等の機能を有するようになっている。

○ しかしながら、「住宅型老人ホームやサ高住」の整備は、「特養」や「介護付き有料老人ホーム等」といった介護保険施設と異なり、市町村・都道府県が策定する介護保険事業計画において任意の記載事項にとどまっているほか、 総量規制の対象外となっている。

○ 有料老人ホームやサ高住の提供事業者は、介護報酬の仕組み上、自ら介護サービスを提供する (包括報酬) よりも、関連法人が外付けて介護サービスを提供した方 (出来高払い) がより多くの報酬を得ることが可能となっており、こうした構造が未届けの施設を含めた、利用者に対する囲い込み・週剰サービスの原因になっている、との指摘がある。

○ また、自ら介護サービスを提供する施設よりも外付けで介護サービスを活用する施設の方が家賃などが安い傾向。安い入居者負担で利用者を囲い込み、関連法人による外付けサービスを活用した介護報酬で利益を上げるビジネスモデルが成立している可能性がある

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上記言及をもとに示されている「改革の方向性(案)」は次の通りとなっています。

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○ 介護保険施設の指定を受けている特養等と、指定を受けていない高齢者向け住まいの役割分担・住み分けについて改めて検討し、自治体の介護保険事業計画において、有料老人ホーム・サ高住も含めた高齢者向け住まいの整備計画も明確に位置付けるべき。地域包括ケアの推進の観点からも、有料老人ホームやサ高住における要介護者に対する介護サービスの需給を勘案した上で、一体となった整備方針を定めるべき。

○ 有料老人ホームやサ高住における利用者の囲い込みの問題に対しては、訪問介護の同一建物減算といった個別の対応策にとどまらず、外付けで介護サービスを活用する場合も、区分支給限度基準額ではなく、特定施設入居者生活介護 (一般型) の報酬を利用上限とする形で介護報酬の仕組みを見直すべき。

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1つ目の方向性案はまだよいとして、もし、2つ目の内容がもし現実化するとなると、多くの事業者が減益となることは自明であり、大混乱に陥ることは容易に予想されるところです。その意味でも今後の議論の議題に挙がるかどうかも含め、意識しておいた方が宜しい視点かもしれません。

続いては「人材紹介会社の規制強化についてです。先ず、大きく3点のポイントについて言及が為されています(そのポイントの背景として、下のデータもご確認下さい)。

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○ 介護事業者が民間の人材紹介会社を活用して人材を採用する場合、一部の事業者は高額の経費 (手数料) を支払っている状況。また、人材紹介会社経由の場合、離職率が高いとする調査もあり、必ずしも安定的な職員の確保に繋がっているとは言い難い。

介護職員の給与は公費 (税金) と保険料を財源としており、本来は職員の処遇改善に充てられるべきもの。介護事業者向けの人材紹介会社については、現在、本人への「就職お祝い金」に関する集中的指導監督の実施等が行われているが、更なる取組の強化が求められる。

介護分野は医療・保育と比べ、厚労省が認定する適正紹介事業者を通じた人材紹介の市場シェア率が低く、更なる対応が必要。

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※下記グラフも合わせてご覧ください。

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現在起こっている問題の原因を考える上においては、「悪質な人材紹介会社をどう取り締まるか(≒良質な人材紹介会社をどう残していくか)」という問題と、「安定雇用を維持できない介護事業者にどのように向き合うか」という問題、両方の視点から対策を検討する必要があろうかと思います。

その意味においては下記方向性案に含まれる「一定期間内に離職した場合は、手数料分の返金を求める」といアイデアは両視点から見ても効果性が高いのでは?と感じる次第です(≒人材紹介会社としても、安定雇用を維持できない介護事業者には紹介を控える可能性が高い、という意味で)。

今後も両方の視点から最適化が図られるような「実効性ある対策」が提起されるよう、期待したいところです(ハローワークや公的人材紹介の充実、については具体性に欠けるため、言及は控えさせていただきます)。

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【改革の方向性】(案)
○ 人材紹介会社に対する指導監督の強化により一層取り組むとともに、医療・介護業界の転職者が一定期間内に離職した場合は、手数料分の返金を求めることを含め、実効性ある対策を更に検討すべき。また、ハローワークや都道府県等を介した公的人材紹介を充実させるべき。

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最後は、「生活援助サービスに関するケアプラン検証の見直し」について確認してまいりましょう。
ここでは3点のポイントについて言及が為されています(主には最後の3点目ですが)。

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○ 利用回数の多い訪問介護の生活援助サービス(「全国平均利用回数 + 2 標準偏差」:月30~40回程度)については、2018年10月より、ケアプランの保険者への届け出を義務づけ、保険者によるケアプランの点検や地域ケア会議における検証を行うこととし、不適切な事例については是正を促すこととされた。

○ さらに、2021年10月からは、居宅介護支援事業所毎に見て、①区分支給限度基準額の利用割合が7割以上、②その利用サービスの6割以上が訪問介護サービスとなる場合についても、ケアプランを保険者へ新たに提出することとされた。

○ しかしながら、届け出を避けるため、訪問介護の「生活援助サービス」から「身体介護サービス」への振り替えが指摘されている。これを裏付けるように、近年、特に軽度者(要介護1、2)の「生活援助サービス」の利用割合が減る一方で、「身体介護サービス」や、「生活援助 + 身体介護サービス」の利用割合が増えている。また、ケアプラン検証の取組についても、自治体によって差がある状況。

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上記を受けて今回、提起されている方向性案は下記の通りです。

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【改革の方向性】(案)
○身体介護に安易に置き換えられるケース等を是正し、訪問介護全体での適切なサービスを確保するため、身体介護も含めた訪問介護全体の回数で届け出を義務付ける等、更なる制度の改善を図るべき。また、各自治体のケアプラン検証の取組状況を定期的に把握し、より実効的な点検を行うことで、サービス提供の適正化につなげていく必要。

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もし上記方向性案が採用された場合、具体的にどのような運用となるのか?現時点では何とも言いづらいところですが、訪問介護事業者の絶対数を考えた場合、決して無視できる話でないことだけは間違いないでしょう。




国策の“風”を読み取り、早め早めの準備を

以上、財政制度分科会内の資料「こども・高齢化」より、介護事業者に直接関係のある部分から論点を幾つか抜粋してお伝えさせていただきました。

本内容は国全体の方針ではなく、あくまで「財務省」という一省庁の意見である、ということはしっかり認識しておく必要はあろうかと思いますが、それでも「財政健全化」が叫ばれる我が国としては、財務省の挙げる声に一定の重みがあることも否めない事実だと思われます。

事業者としては上記内容を踏まえつつ、「もしこれらの施策が実行された場合にどう対応するか?」について事前に頭を働かせておくことが重要だと言えるでしょう。

私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。

※上記内容の参照先URLはこちら

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/20240416zaiseia.html






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