経済財政諮問会議で示された、介護業界に深く関連する論点を確認しておきましょう
2024年05月29日
「“高齢者”の定義を5歳延ばすべき」・・・・2024年5月23日に“経済財政諮問会議”が開催
内閣総理大臣自らがリーダーシップを執る、という点において、この場での議論内容が国策に色濃く反映されることが一般的になっている“経済財政諮問会議”。
「高齢者の定義について、5歳延ばすことを検討すべきだ」・・・・現在、世の中で様々な議論が沸き起こっている本内容も、この会議での提言が発端となっている訳ですが、これ以外にも介護事業者として留意すべき論点が本会議においては幾つか示されています。今回は、介護経営に特に関係してくるであろう内容をピックアップし、皆様にお届けしてまいります。
介護分野に影響を及ぼす「論点」の具体的中身とは
では、早速、中身に移ってまいりましょう。今回は「誰もが活躍できるウェルビーイングの高い社会の実現に向けて」という大テーマの中で語られている内容から2点、抜粋させていただきます(尚、前後の文脈に対する理解を深めることも含め、介護事業者にとって直接関係が薄いような内容も敢えて記載させていただいていますこと、悪しからずご容赦下さい。その上で、介護事業者として特に留意すべきと思われるポイントについては、太字とさせていただいています)。
先ずは一点目、「女性活躍・子育て両立支援、全世代型リスキリング、予防・健康づくり」というサブテーマの中で語られている内容についてです。
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全世代型社会保障制度の構築・成長と分配の好循環の実現を通じ、誰もが活躍できるウェルビーイングの高い社会の実現を目指す。その際のポイントは、現役世代への分配機能向上や健康・医療分野の産業化(HX:Healthcare Transformation)である。社会保障・財政と経済の相互依存関係を十分に考慮し、以下の点を実現させる「新たな令和モデル」というべき政策パッケージを構築すべき。
1. 生産性上昇: 医療・介護分野における、DX,ロボット等の最新技術への投資徹底活用、データ活用、タスクシェア・シフトの推進などの包括的な供給構造改革。健康・医療分野の海外展開を成長戦略として位置付け推進
2. 労働参加の拡大: 女性・高齢者の労働参加促進、不本意非正規解消、就労促進のための制度改革、リスキリング
3. 人口減少への対応: 少子化対策の徹底、若い世代の待遇改善、魅力的な地域づくり、外国人に魅力的な雇用の場の創出
この「新たな令和モデル」に取り組むことで、人口減少が加速する2030年代以降も実質1%を安定的に上回る成長を確保するとともに、それぞれの生涯年収が上がる等、家計が成長の恩恵を実感できる分配を実現することが必要。より具体的には、分配面のメルクマールとしてのKPIを掲げて、以下の課題に取り組むとともに、DX等の新技術を活用する実装研究プロジェクトを実施し、EBPMを推進し得られたデータを政策立案に活用すべき。
〇 女性活躍、ジェンダーギャップの解消、子育て・両立支援:「こども未来戦略」に基づく少子化対策の徹底・こどもや子育て世帯を社会全体で支える気運の醸成・EBPMの活用、能力に応じた若い世代の待遇改善(例:初任給30万円超の企業の拡大)、「年収の壁」への対応、女性、特にひとり親の不本意非正規解消、少子化・人口減少対策の視点も含めた若者・女性に選ばれる魅力的な地域づくり(10年の取組の検証を踏まえた地方創生の新展開)を進めるべき。
〇全世代リスキリングの推進:高齢者の健康寿命が延びる中で、高齢者の定義を5歳延ばすことを検討すべき。その上で、いつでもチャレンジできるよう、DXや将来の人材ニーズを踏まえ、就業につながる教育・訓練の実施と、新たな給付等を活用した受講者の生活保障の充実を、利用状況を検証しつつ一体的に進める。その際、諸外国の例も参考にしながら、生産性向上の切り札であるリスキリング推進をめぐる現下の課題に対して関係省庁が連携の上、女性、高齢者、就職氷河期世代等を含む全世代を対象としたリスキリングについて官民一体による国民的議論を喚起すべき。
〇予防・健康づくり(プロアクティブケア):正しい知識の下でキャリア設計を行うとともに、希望に応じ働き続けられるよう、若年期からの健康管理を促す全世代型健康診断やプレコンセプションケア、セルフメディケーションなどの推進、PHR5等のデータの活用など、国民の自発的な疾病予防・健康づくりを推進する。これらの施策と働き方に中立的な年金制度の構築など希望に応じた女性・高齢者等の就労を後押しする政策をパッケージで進めるべき。
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続いて2点目。「社会保障の強靭化」というサブテーマの中で語られている内容についてです。
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「誰もが活躍できるウェルビーイングの高い社会」(新たな令和モデル)実現に向け、社会保障が、成長と分配の好循環を支えるには、資料1の施策(※上記の内容を指しています)と同時に、応能負担と歳出改革の徹底を通じて、社会保障を持続可能なものとし、国民の将来不安を払しょくしていく必要がある。長期推計で確認されたように、医療・介護の持続性確保には、人口減少が加速する2030年代以降も実質1%を上回る成長を確保するとともに、足下から給付費対GDP比の上昇基調に対する給付と負担の改革に取り組むことが重要である。
その実現に向けては、一人当たり医療費の地域差半減や地域医療構想の実現等が課題だが、これらは長らく未実現にとどまってきた。経済・財政一体改革の点検・検証の結果も十分に踏まえながら、改革を強力に推進し、医療・介護費の適正化を図るべき。以下の項目について、骨太方針に盛り込み、諮問会議や経済・財政一体改革推進委員会で進捗を点検すべき。
(1) データ駆動型の社会保障に向けた環境整備
● 医療DXの工程表に沿って、電子カルテの標準化・普及、全国医療情報プラットフォーム構築、医療情報の二次利用等を強力に推進。その際、今後の医療介護の複合化を踏まえ、医療と連携できるよう介護情報を標準化。医療・介護事業者のDX実装を促すために報酬上のインセンティブを活用。
● さらに、公的保険から報酬を受け取る全ての医療・介護事業者を対象とする事業報告データの早急な整備、OECDのSHA手法に基づく国際比較可能な保健医療支出の政府統計化の着実な推進。
(2) 社会保障分野でのイノベーション創出
● 学界のシーズを実用化につなぐべく、基礎研究と創薬スタートアップとの連携強化、迅速な治験のための環境整備と人材育成等により創薬エコシステムを強化。イノベーションを促進する観点から、費用対効果の高い革新的新薬に対する薬剤費の配分の重点化。
(3) 国民の安心につながる医療・介護の提供体制等
● 地域医療構想は、2025年目標に向け国のアウトリーチ支援を徹底。その実例から地域類型に応じたモデルプランを用意し横展開を実施。2040年頃を見据えて85歳以上の人口増に備え、医療・介護連携、外来(かかりつけ医機能)・在宅医療への対象拡大、都道府県の責務の明確化等、法制度を見直し。
● 医師の偏在是正について、診療報酬等による経済的インセンティブと規制的手法のベストミックスによる対策を早急に検討。
● 介護従事者不足や高齢化の地域差に対し、ロボット・AIの活用、経営大規模化、保険外サービス事業者や保育・障害福祉等との連携を含む、介護サービス提供体制の中長期ビジョンを検討。ビジネスケアラー増大に対し、企業向けガイドライン活用等による介護と仕事の両立に係る取組を推進。
● 身寄りがないなど助けを要する高齢者への終活・住まいの支援や身元保証の整備。認知症対策の推進。
(4) 持続可能な保険制度、給付と負担の在り方
● 医療費適正化と持続可能な保険制度の運営に向けて、保険者や審査支払機関の取組を強化。国保については、都道府県内の保険料水準の統一、医療費適正化へのインセンティブ向上と所得調整機能の確保等都道府県のガバナンス強化、DX・データヘルス計画標準化の徹底を柱に、普通調整交付金を含め改革を推進。
● 国民皆保険の堅持と両立させつつ、国民が医療や医薬品に関するイノベーションの恩恵を早期に享受できるよう、民間保険の活用も含めた保険外併用療養費制度の対象範囲を拡大するとともに、薬剤の費用対効果評価や自己負担の在り方を検討。
● 介護におけるサービス利用者2割負担の判断基準等の見直しは、応能負担の考え方等に沿って、次期介護保険事業計画期間(2027年度~)の前までに検討し、確実に結論を得る。
(5) 社会保障の強靱化に向けた検討
● 中長期的な社会保障制度の方向性は、経済・財政・社会保障を一体的に捉えて検討する必要があり、経済財政諮問会議で多角的に審議。社会保障による需要創出や格差是正効果、世帯類型別の家計可処分所得、ヘルスケア等の産業政策や地域経済への影響等について内閣府は分析を強化。
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風を読み、早め早めの準備・思考を
以上、5月23日同会議の資料から、特に介護事業者の皆様に関連するであろうポイントを幾つか抜粋してお伝えさせていただきました。
前述の通り、同会議は内閣総理大臣が議長を務める等、国策の未来を予測する上でも大変重要な会議であることは申し上げるまでもなく、これらの方針が3年後の法改正にも様々な影響を与えるであろうことは想像に難くありません。
その意味でも、事業者としてはこれらの情報について深く理解&更なる情報収集を行うと共に、早め早めの準備(具体的アクションだけでなく心の準備も含む)を行う姿勢を持つ必要があると言えそうです。
我々としても、更なる有益な情報・具体的な情報が入手でき次第、皆様にどんどん発信してまいります。
※引用元資料はこちら
↓
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/0523/agenda.html
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