社会保障制度改革国民会議の報告書から見える、介護業界の将来像(その3)
2013年10月01日
報告書の記載内容から“未来”をよむ
前回は、“地域包括ケアシステムの実現”というテーマに沿って、具体的レベル・各論に目を向けた解説を行いました。最終回である今回は、消費増税と介護報酬改正の影響について考察を加えたいと思います。
報告書、並びに現状の議論から読み取る「2015年の報酬改正と消費増税の影響」
先ず、本テーマに関連する報告書内の記述としては、下記文章が挙げられます。
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(1)医療・介護サービスの提供体制改革の推進のために必要な財源については、消費税増収分の活用が検討されるべきである。具体的には、病院・病床機能の分化・連携への支援、急性期医療を中心とする人的・物的資源の集中投入、在宅医療・在宅介護の推進、更には地域包括ケアシステムの構築に向けた医療と介護の連携、生活支援・介護予防の基盤整備、認知症施策、人材確保などに活用していくことになる。
(2)ただし、その活用が提供体制の改革に直接的に結びついてこそ、消費税増収分を国民に還元するという所期の目的は果たされることになる。
(3)その活用の手段として、診療報酬・介護報酬の役割も考えられるが、医療・介護サービスの提供体制改革に係る診療報酬や介護報酬の活用については、福田・麻生政権時の社会保障国民会議の際には、体系的な見直しが前提とされていたことに留意する必要があり、医療・介護サービスの在り方が「地域完結型」に変わるからには、それに資するよう、診療報酬・介護報酬の体系的見直しを進めていく必要がある。
(4)また、今般の国民会議で提案される地域ごとの様々な実情に応じた医療・介護サービスの提供体制を再構築するという改革の趣旨に即するためには、全国一律に設定される診療報酬・介護報酬とは別の財政支援の手法が不可欠であり、診療報酬・介護報酬と適切に組み合わせつつ改革の実現を期していくことが必要と考えられる。
(5)医療機能の分化・連携には医療法体系の手直しが必要であり、また、病院の機能転換や病床の統廃合など計画から実行まで一定の期間が必要なものも含まれることから、その場合の手法としては、基金方式も検討に値しよう。
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以前のニュースレターでもお伝えした通り、最終判断を10月に持ち越しているとはいえ、消費増税はほぼ既定路線として実行される、と考えておいて差支えないでしょう。
では、増税により、日々の介護経営にはどのような影響が出てくるのでしょうか?
パッと思いつくだけでも、次の3つが頭に浮かびます。
(1)食材費等の仕入れ経費や・外注費等にかかる消費税負担が増大する。
⇒資金繰りが厳しくなる?
(2)ご利用者宅の収入増加が約束されない中、税負担だけが先行し、家計が圧迫される。
⇒サービスの利用控え誘引?
(3)職員の生活・家計も(2)と同様に厳しくなる。
⇒給与アップの要望増大?
上記を見るだけでも、消費増税は介護経営に大きな影響を及ぼすものだ、ということは、ご理解いただけるものと思います。
他方、8/21に行われた社会保障審議会・介護保険部会では、消費税の引上げに伴う影響分を補填するため、介護報酬への上乗せ対応を行う方針が示されました。
“基本単位数への上乗せを基本としつつ、消費税負担が相当程度見込まれる加算は上乗せを検討する”とし、基準費用額や特定入所者介護サービス費(居住費・食費関係)、区分支給限度基準額についても給付実態等を勘案しながら引き続き検討するとしています。
しかし、ここで勘違いしてはいけないのは、税率が3%アップするからといって、その分を補填する介護給付費のアップ率が同じく3%であるはずはない、という事実です。そして、それを裏付ける国の姿勢が、今回のこの報告書の上記記述によって、より鮮明になった、と理解することが出来るでしょう。
換言すると、「国の掲げる地域包括ケアに積極協力しようとする(=体制整備をするetc)事業所に対しては、(上記引用文で言うところの)“全国一律に設定される診療報酬・介護報酬とは別の財政支援の手法”で評価を加えていく」ということであり、従来と同じ経営をするだけでは、消費増税の影響を吸収することはほぼ100%“無理”、ということです。
では、介護基礎報酬にはどれくらい上乗せされるのでしょうか?現段階では全くの白紙ですが、個人的見解としては、過去、消費税導入時と増税時の診療報酬に対する補填数値が参考になるのでは?と考えています(具体的には、消費税が導入された1989年には0.76%、税率を5%に引き上げた1997年には0.77%の上乗せ)。この数値を見ても、また、上記の文章を読んでも、増税により事業者が負担するであろう金額を超えるぐらいの上乗せはほぼ有り得ない、と考えておくのが自然ではないでしょうか?
このような現状、そして、国の将来像から見える未来予測に基づき、我々介護事業経営者は早めに策を講じていく、もしくは、少なくとも、策を練っておく必要があろうかと思います。
ここから先は正に、経営者としての“本領発揮”の時期です。
我々としても、今後、上記を含め、有益な情報が入り次第、皆様へ発信させていただきますし、有益な対応策等があれば積極的にご提案をさせていただくようにしてまいります。
では、ご利用者やご家族、そして職員のため、共に頑張ってまいりましょう!
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