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デイサービスに走る“激震“とその対応(その2)
2013年10月01日

前回は、9月18日の介護保険部会で示された6つの論点の内、論点1について考えました。
今回は前回に引き続き、論点2~4を同時に見ていきます。


論点2~6に関する考察

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[論点2] 柔軟な事業展開を促進する観点から、サービス提供実態を踏まえた上で、人員基準の緩和を検討してはどうか。
[論点3] 事業所数が増加している小規模の通所介護については、少人数で生活圏域に密着したサービスであることから、運営委員会等を通じた地域との連携や運営の透明性を確保するため、市町村が指定・監督する地域密着型サービスに位置づけてはどうか。
[論点4] また、選択肢の一つとして、事業所の経営の安定性を図るとともに、柔軟な事業運営やサービスの質の向上の観点から、人員基準等の要件緩和をした上で、通所介護(大規模型・通常規模型)事業所のサテライト事業所に位置づけることや、小規模多機能型居宅介護の普及促進の観点から小規模多機能型居宅介護のサテライト事業所に位置づけることも可能としてはどうか。

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上記論点を図で表現すると、下記のようなイメージになります。
(最下部、◆介護保険部会で示された論点2~4の概略◆をご参照下さい)
かなり大きな構造変化になると共に、デイサービス事業者の経営に少なからず影響を及ぼすものだと言えそうです。

論点3に関して、地域密着型サービスになる、ということは、その指定や監督の権限は当然、市町村に移行することになります。そうすると、小規模デイが増える=市町村の財政負担が重たくなる、ということで、特に財政状況が芳しくない自治体等においては、2015年以降、指定に対して慎重な対応を見せるところも増える可能性が十分に考えられます。
逆に、そういう緻密(?)な供給管理を行うことで、全体の事業所数の伸びを抑える(=財政圧縮に貢献する)、ということが狙いだと理解する方が適切かもしれません。
また、2012年の法改正において、「今後、居宅サービスについては、都道府県と市町村で協議しながら開設の可否を決定する」という流れが決まっていることから、場合によっては、2015年以降を見据え、早々に指定制限に入る市町村が出てくることも考えられます。
更には、地域密着に移行した場合、その市町村のご利用者しか受け入れることが出来ないのが原則ですので、自市以外から通われている方は、2015年以降、ルール通りにいけば、利用が出来なくなる可能性もあるかもしれません。
また、論点2・4に関して、換言すると、人員基準緩和⇔小規模デイのサテライト化≒本体報酬に準じる≒小規模デイは報酬減≒給付抑制に貢献、という流れが見て取れます。
上記案が実現すれば、国としては、現状・課題の3番目に掲げていた「特に小規模の事業所については、介護報酬単価が高く設定されており、実際に参入事業所数も、小規模事業所の増加が顕著な状況にある」というテーマをクリアーすると共に、国の管理コスト圧縮にも貢献できることになるでしょう(その分、市町村には負荷がかかりますが)。
次の論点5については、現時点ではそれほど私たち事業者に影響が出る話ではないので、割愛させていただきます。続いて最後の論点6に移ります。

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【論点その6】通所介護の設備を利用して法定外の宿泊サービスを提供している場合については、泊まりの環境が十分でない等の問題点も指摘されている。このため、利用者保護の観点から届出、事故報告の仕組みや情報の公表を行い、サービスの実態が把握され、利用者やケアマネージャーに情報が提供される仕組みとするべきではないか。
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急増したお泊りデイに関する基準・ガイドラインについては東京(2011年4月28日付)、大阪(2012年8月31日付)では既に発布されていますが、それ以外の地区では、具体的な文書が出ている訳ではありません(不文律のようなものは沢山ありますが)。
それらに対し、全国的に透明性が高い形に変えていこう、ということが促進されることになるでしょう。
お泊りデイを経営されている方は、事前に東京や大阪の基準に目を通し、それらの基準をクリアーする事業所づくりについて、事前にイメージしておいたほうが良いと言えそうです。


6つの論点から見える、今後の事業経営を見直すポイント

前回、今回に分けて確認してきた論点を踏まえ、今後の検討ポイントとしては、下記4点が挙げられます。

(1)将来、デイサービスが4類型に分かれることになった場合、自社のサービスがどの類型に属するのか?(or自社のサービスをどの類型にシフトさせるのか?)についての方針を予め定めておくこと。

(2)その上で、現状に付加すべき人員や研修等を明確化し、具体的な行動を起こすタイミングも予めイメージしておくこと。尚、どのタイミングで人員を増やすか、研修を実施(or受講)するかについては、報酬の詳細が出ていない現段階では拙速に動く必要はないと思われるが、2015年以降の報酬減の可能性も踏まえ、実行のタイミングも検討しておくこと。
(研修については、既存の報酬が約束されている2014年度中に受講するetc)

(3)特に小規模事業者は、定員拡大や事業所合併等も視野に入れた「事業所規模の変更」、並びにサテライトの仕組みや他サービスへの展開・進出等も視野に入れた「事業規模の変更」等について予め検討を進めておくこと。

(4)報酬減による売上ダウン、また、同時に消費増税の実行による経費増を念頭に、聖域を設けることなく、可能な限りのコストダウンを志向し、実行すること。

現状維持のままでは文字通り、“後退”してしまうことが必至な中で、余裕を持った事前準備・シミュレーションを行い、全貌が見えた暁には迅速に動けるように準備を進めておいたほうがよいことは間違いありません。
我々としても、今後、上記を含め、新たな情報・有益な情報が入り次第、皆様へ発信させていただきますし、新たな視点に基づいた有益な対応策等が見いだせれば、積極的にご提案をさせていただくようにしてまいります。


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