地域医療連携推進法人について理解しておきましょう
2015年09月28日
「医療法の一部を改正する法律案」が国会を通過
2015年9月16日、先行して衆議院を通過した「社会福祉法等の一部を改正する法律案」に先駆けて、「医療法の一部を改正する法律案」が参議院を通過し、正式に成立となりました。本改正の目玉は、何と言っても「地域医療連携推進法人」の法制化でしょう。今後、各地で動きが加速されるかもしれないことを念頭に、今回のニュースレターでは、同法人の仕組やポイント、推進可能性等についてあらためて確認しておきたいと思います。
地域医療連携推進法人とは
地域医療連携推進法人とは一体どのような仕組みなのか。
そのイメージ及び事業運営に関するポイントは次の通りです(厚生労働省内資料より抜粋)。
※イメージ図は最下部の図1をご覧ください
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【ポイントその1】法人格
・地域の医療機関等を開設する複数の医療法人その他の非営利法人の連携を目的とする一般社団法人について、都道府県知事が地域医療連携推進法人(仮称)として認定する。
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【ポイントその2】参加法人(社員)
・地域で医療機関を開設する複数の医療法人その他の非営利法人を参加法人とすることを必須とする。
・それに加え、地域医療連携推進法人の定款の定めるところにより、地域包括ケアの推進のために、介護事業その他地域包括ケアの推進に資する事業を行う非営利法人を参加法人とすることができる。
・営利法人を参加法人・社員とすることは認めない。
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【ポイントその3】業務内容
・統一的な連携推進方針(医療機能の分化の方針、各医療機関の連携の方針等)の決定。
・病床再編(病床数の融通)、キャリアパスの構築、医師・看護師等の共同研修、医療機器等の共同利用、病院開設、資金貸付等。
・関連事業を行う株式会社(医薬品の共同購入等)を保有できる。
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【ポイントその4】ガバナンス(非営利性の確保等)
・社員の議決権は各一個とするが、不当に差別的な取扱いをしない等の条件で、定款で定めることができる。
・参加法人の事業計画等の重要事項について、意見を聴取し、指導又は承認を行うことができる。
・理事長は、その業務の重要性に鑑み、都道府県知事の認可を要件とする。
・地域医療連携推進協議会の意見を尊重するとともに、地域関係者を理事に加えて、地域の意見を反映。
・営利法人役職員を役員にしないこととするとともに、剰余金の配当も禁止して、非営利性の確保を図る。
・外部監査等を実施して透明性を確保する。
・都道府県知事が、都道府県医療審議会の意見に沿って、法人の認定、重要事項の認可・監督等を行う。
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これまで病院や診療所を運営する複数の医療法人が連携する場合は、合併して1つの法人になる、いわゆる「M&A」という手段が採られていました。しかし、1つの法人になるにはポストの調整や給与制度、組織風土の擦り合わせ等、様々煩雑な業務が発生します。その点、同スキームはそのような業務を一定程度不要とすることが出来る、或いは、将来的な合併に向けて緩やかに調整するリードタイムが稼げる、という点で、要注目のスキームだとも言えるでしょう。
また、運営面においても、上記の通り、薬・機器の購入や医師の研修をグループ単位でできるほか、病院ごとに決まっているベッド(病床)の枠の総数が変わらなければグループ内の病院で調整できるようになったり、病院ごとに役割を分担することで医療機器などの投資負担を減らすことが可能になる等、様々なメリットが期待できます。他方、国としては、病院ごとの役割分担も進めて設備投資の負担を減らし、医療費の抑制につなげることが出来るでしょうし、一定規模以上の病院は公認会計士による監査を受けることを義務づける等、医療法人の透明性を確保することもできるでしょう。
地域医療連携推進法人の「推進」課題
以上、同スキームのメリットについて幾つか挙げさせていただきましたが、では、この動きが全国各地で積極的に活用・推進されるか?と考えると、現段階においては未だ「No」と判断せざるを得ない状況ではないかと思います。確かに煩雑な業務は発生するかもしれませんが、資本力のある会社であれば、名実共に「一体」としてマネジメント出来る“M&A”の方が有益だ、という判断になる場合も多いでしょう。後は、本スキームを採用することによるメリット・インセンティブをどこまで国としてデザインするかではないでしょうか。
例えば、社会医療法人スキームが思いのほか浸透した(ように感じる)のは、何と言っても“法人税0%”という強力なインセンティブが働いたからであることは間違いありません。或いは、“地域連携クリティカルパス”のように、一つの確固たる流れが地域で構築され、俗っぽい言い方ですが、「この仕組みに一枚噛んでおかないと、病院として継続できない」というような、いわゆる“危機感”が働くような状態が生まれた事が、浸透のインセンティブになったのではないかと思います。そのような「必要性」が喚起されなければ、わざわざ経営的に煩雑になるかもしれない同スキームが促進されることは、なかなかイメージし難いのではないでしょうか(人口減が著しく、医療マーケットの減退が見えてきている地域では、特に上記2番目の理屈が早期に当てはまってくるかもしれません)。
いずれにせよ、この流れは今後、様々な施策と絡まり合いながら、各地でジワジワと動き出すものと思われます。医療法人の皆様は勿論、社会福祉法人、NPO法人等の非営利事業者は、自地域の情報に対し、今まで以上に感度を高めておくよう、強く意識した方がいいかもしれません。我々としても、更なる情報が入手でき次第、皆様にどんどん情報を発信してまいります。
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