5月に開催された“介護給付費分科会”のポイントを理解しておきましょう
2017年05月31日
2018年度法改正・報酬改定に向けた議論がいよいよ本格始動
2018年度介護保険法改正・報酬改定の本格議論が始まった“介護給付費分科会”。2017年5月にも2度開催され、徐々に各サービス・機能ごとの具体的な論点提示が開始されています。これらの情報を早めにインプットし、(心構えも含めた)然るべき準備を行っていく事を目的に、今回は、本会で挙げられた論点について内容を確認してまいります。
2017年5月開催の「介護給付費分科会」で示された論点とは
では、早速、中身を確認してまいりましょう。先ずは定期巡回・随時対応型訪問介護看護の論点についてです。
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【論点】
○ 定期巡回・随時対応型訪問介護看護や夜間対応型訪問介護について、請求事業所数や利用者数の現状を踏まえると、更なる普及が課題であると考えられるが、サービス供給量を増やす観点や機能強化・効率化を図る観点から、人員基準や資格要件等の在り方についてどう考えるか。特に、事業者からは、日中のオペレーターについて兼務を求める要望があるが、経営の効率化を図る観点から、オペレーター等の役割や実態を詳細に調査した上で、ICTの活用等も含めた人員基準や資格要件の在り方について検討してはどうか。
○ 定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、そのサービス提供の多くが、集合住宅に居住する利用者に対して行われているが、地域全体へ必要なサービスが行き届くようにするためにはどのような方策が考えられるか。
※2017年5月12日介護給付費分科会資料より抜粋
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定期巡回・随時対応型訪問介護看護について、サービスの参入の障壁・課題として、59.8%の事業所が「利用者が集中する時間帯の職員体制の構築」を挙げており、また、オペレーターの基準・兼務要件に対する要望として、72.5%の事業所が「日中においても随時訪問介護員の兼務を認めてほしい」を挙げている中、ICTの有効活用含め、そのような声がどこまで反映される形になるのか。また、「集合住宅以外へのサービス提供」を更に促進させるために、どこまで具体的な対応(例えば、報酬上の手当etc)が施されるのか。「(採算ラインに乗りづらい、という意味で)そもそもサービスモデルとして無理があるのではないか」という厳しい批判も噴出する中、量的整備の実現に向けて、今後の議論の深化に注目していきたいところです。
では、次のサービス、小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護の論点に移ってまいります。こちらも「量的整備を如何に実現するか」というテーマを基礎に議論が展開されています。
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【論点】
(共通の論点)
○ 小多機や看多機について、請求事業所数や利用者数の現状を踏まえると、更なる普及が課題であると考えられるが、サービス供給量を増やす観点や機能強化・効率化を図る観点から、人員基準や利用定員等の在り方についてどう考えるか。
○ 小多機や看多機について、看護職員の雇用が難しいという声があるがどう考えるか。
(小規模多機能型居宅介護に関する論点)
○ 小規模多機能型居宅介護事業所に置かれる介護支援専門員以外の介護支援専門員が居宅サービス計画を作成した場合の取扱いについてどう考えるか。
○ 小規模多機能型居宅介護と他のサービスとの併用についてどう考えるか。
※2017年5月12日介護給付費分科会資料より抜粋
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1つ目と2つ目の論点を総合するに、「人員基準」について」は、1人以上とされている看護職員の配置に対する弾力的な運用の検討が有力視されています。デイサービスと同様、病院や診療所、訪問看護ステーションなどと協力して利用者の状態をチェックできるようにしている場合には、基準を満たしているとみなす、等の案が候補として挙がっているようです。
2つ目の論点「居宅のケアマネが小多機の利用者も担当できるようにする」という案については、「利用者や家族の立場からみると(ケアマネが引き続き変わらない、という意味で)安心」「外部から確認の目が入るというメリットもある」等に代表される前向きな意見と、「ケアマネジメントが内包されているからこそ、利用者の状態に応じたきめ細かく柔軟なサービスが提供できる」という慎重派の意見が併存しています。あくまで私見ながら、「目的達成の為に何を為すべきか」という視点に立って考えると、「前向きな意見」に基づいた推進を大前提に、慎重派の意見に基づいた肉付けを行う方向になるのかもしれない、と感じる次第です。
最後の3つ目の論点「他サービスとの併用」については、現行ルールで認められている訪問リハ、訪問看護、居宅療養管理指導、福祉用具貸与の併用以外のサービス併用について検討を進めていく、という内容です。繰り返しになりますが、「量的整備が促進されるために何をすべきか」という大上段のテーマに基づいてどのような内容に煮詰められていくのか、今後の動きを注視したいところです。
また、番外編として、論点の中には挙げられていませんでしたが、別添資料の中には「要介護1以上の者を対象に、訪問・通いを中心に、泊りを含めたサービスを柔軟に組み合わせて提供する(介護予防型は設けない)」「訪問サービスの利用増に対応するため、登録定員の上限を50人に引き上げる」「登録者3人に対し介護職員1名(以上)を配置する。夜間は2名(以上)を配置する」「看護職員の配置は必須とせず、訪問看護ステーションの併設を条件とする」「同一主体であるかどうかを問わず、訪問看護の外付け・内付け(看護小規模多機能)のどちらも可能とする」「計画作成責任者(ケアマネ)の内付けは現行どおりとする」等の新たな基準のもとに展開する小規模多機能型居宅介護の中の新類型「新型多機能サービス」についても言及が為されています。このような動きがある、ということも、関係各社の皆様は頭に置いておいた方が良いと言えるでしょう。
(※最下部の「図1:新型多機能サービスのイメージ図」をご覧ください)
最後に、「認知症施策の推進」に対する論点を挙げさせていただきます。
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【論点】
○ 利用者の状態に応じた医療ニーズへの対応(医療機関との連携、口腔機能の管理等)、福祉用具の提供など、認知症対応型共同生活介護のサービスの在り方について、どのように考えるか。
○ 認知症対応型通所介護の利用者の状態を踏まえたサービスの在り方について、地域密着型通所介護との役割分担等を含め、どのように考えるか。
○ 認知症高齢者が今後も増加する見込みである中、認知症に関連する加算のあり方についてどのように考えるか。
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1つ目の論点、特に「医療ニーズへの対応」については、「認知症対応型共同生活介護から退去の判断に至った背景では、“医療ニーズの増加”が最も多く、入居後の状態像の変化に応じた医療ニーズの対応の可否については、“胃ろう・経管栄養”について対応不可と回答している事業所が多い」という実情を踏まえ、何らかの対応策が示される可能性が高いと思われます。
2つ目の論点については、一つの検証結果として、「日常生活自立度別の割合は、それぞれ地域密着型通所介護ではIIbが30.6%、認知症対応型通所介護ではIIIaが33.3%で最も高い割合となっているなど、認知症対応型通所介護の利用者の方は日常生活自立度が重度である方の割合が高い」というデータが挙げられています。これらのデータを踏まえ、どのような役割分担を進めていくのか?(例えば、認知デイはIIIa以上とか?)
3つ目の論点については、前回の改定において通所介護や特定施設入居者生活介護等、認知症高齢者を一定程度受け入れ、必要な体制を確保している事業所への評価(認知症加算・認知症専門ケア加算)を創設したこと等を背景に、今後、認知症高齢者の増加が見込まれる中で、各サービスにどのような「認知症対応」のキーワードを埋め込んでいくのか?について、前向きに検討が加えられていく、と理解をして差し支えないでしょう。
議論のプロセスから関心を持って情報を追いかけておくことが大切
上記情報はあくまで「現時点における議論のプロセス」であり、今後、時間の経過と共に、更に内容が煮詰められたり、或いは、場合によっては議論の風向きがいきなり転換するような状況も発生するかもしれません。介護経営者としては「こうなりました」という最終的な結論だけでなく、「何故このような内容に着地したのか?」という、言葉の裏に潜む意図や背景を温度感も含めて理解する姿勢が重要となってくるのではないでしょうか。
そのためにも早め早めに情報をキャッチアップし、頭の中で“PDCA”を回しておく事が重要だと思われます。「もし上記が実行された場合、自社にはどのような影響が出てくるか?」「それら想定される影響に対し、どのような対応を行う事が最適なのか?」幹部育成の視点も含め、そのような議論を社内で始めていかれる事を是非、おススメする次第です。
私たちも今後、有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。
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