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今年10月開始の「新たな処遇改善加算」の最新情報及び注意点について確認しておきましょう
2019年02月28日

新たな処遇改善加算の名称が「特定処遇改善加算」に決定

「来年10月の増税実行のタイミングに合わせて、10年以上の介護福祉士の給与を月8万円程度引き上げる財源を準備する」そんな情報が歪曲解釈され、今なお業界を大きく揺るがせている、新たな処遇改善施策。

2019年2月13日に開催された第168回社会保障審議会介護給付費分科会において、その施策の名称は“特定処遇改善加算”(以降、新加算と表記)となることが公表されました。

今回は、この新加算に関する現在の最新情報を確認すると共に、現時点で考えられる代表的な注意点・懸念点について確認してまいります。




「特定処遇改善加算」新たになった加算率

それでは、早速、中身に移ってまいりましょう。先ずは、特定処遇改善加算を取得できる事業者の前提条件についてです。
(こちらは2018年12月に公表された情報です)

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【新加算(特定処遇改善加算)の取得要件】
1)現行の介護職員処遇改善加算(I)から(III)までを取得していること
2)介護職員処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取組を行っていること
3)介護職員処遇改善加算に基づく取組について、ホームページへの掲載等を通じた見える化を行っていること

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現行の処遇改善加算取得事業者の大多数は(I)から(III)を取得されていることを含め、上記3点の取得条件はそれほど高いハードルにはならないのではないかと思われます。

続いては、各サービスにおける加算率についてです。
※最下部の表をご覧ください

「新加算I」を算定するためには、「サービス提供体制強化加算(通所介護など)」「特定事業所加算(訪問介護など)」「日常生活継続支援加算(特養など)」「入居継続支援加算(特定施設など)」のいずれかを取得していることが要件となります。

ただ、それらの加算さえ取得していれば無条件に新加算Iの取得がOK、ということではなく、例えばサービス提供体制強化加算の場合は最も高い区分(加算I イ)のみが新加算Iの対象となることや、特定事業所加算についても介護福祉士の割合など従事者要件のある区分しか認められないことには注意が必要です。

事業者としては今回の加算率を参照しながら、上記に挙げた各種体制加算を現状において取得していない場合の対応策について検討される必要があるのではないでしょうか。(事業所内の配分方法については前々回で触れさせていただきましたので、ここでは割愛させていただきます)




「特定処遇改善加算算」施行に伴う懸念点・注意点

以上、新加算に対する現時点での公表内容について簡単に触れてまいりました。

続いては様々な介護経営者と議論を行う中、この新加算の実行に伴い、多くの方々が懸念されていた点について触れさせていただきたく思います(大きくは4点)。

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【懸念その1】
「経験・技能のある介護職員(=10年以上のキャリアを持つ介護福祉士)」の多くの方が、「自分は月8万給与が上がる」と勘違いしてしまっている可能性が高い。

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冗談のように聞こえるかもしれませんが、上記のように思い込んでいる介護職員の方々が多いことに本当に驚かされます。原因は、「国からの発信の表現方法」に在ることは明らかなのですが、「10月から月8万円給料が上がる」と思い込んでいる職員の方々に、「全員が8万円上がる訳ではない」と説明するのは彼ら・彼女らの期待を裏切ることにつながる可能性もあり(勿論、経営者の方々の責任ではありませんが)、下手をするとそれを理由にモチベーションを下げてしまう方が出てくるかもしれません。

他方、前述の加算率を見る限り、事業者によっては月8万円の待遇改善など「そもそも無理」という場合もあるように思われます(特に小規模の事業所で、“経験・技能のある介護職員(=10年以上のキャリアを持つ介護福祉士)”を複数抱えている場合等)。経営者としては先ず、新加算を取得することで得られる自社の加算額を把握すると共に、(全員の月8万円上乗せは難しい、ということについて)伝えるタイミングや説明方法も含め、慎重な対応が必要となる場合もあるでしょう。

次に、2点目の懸念点についてです。

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【懸念その2】
配分方法によっては、組織内の不満が高まる可能性も考えられる。

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今回の加算を取得する場合、経験・技能のある介護職員(=10年以上のキャリアを持つ介護福祉士)の中に、「月額8万円の処遇改善となる者」又は「改善後の賃金が年収440万円(役職者を除く全産業平均賃金)以上となる者」を最低でも一人は設定する必要があります。

そうなると、組織の中で「あの人は“月額8万円の上乗せ”或いは“年収440万円以上”の待遇改善となったのに、なんで私はそうならないの?」という不満が生じる可能性も十分に考えられ、上記同様、モチベーションの低下や、場合によっては不満を感じた方々の“退職”という最悪の事態も招きかねないことも考えられるのではないでしょうか。

続いて3点目の懸念点についてです。

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【懸念その3】
同一地域内で、人財の流動化(=経験・技能がある方々の引き抜き)が促進される可能性も考えられる。

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今回の新加算に伴い、たとえば経営体力を有する法人(例えば、比較的大規模の法人)などは、経験・技能のある介護職員(=10年以上のキャリアを持つ介護福祉士)を確保することを目的に、「我が社に転職してくれれば、該当される方は全て、“月額8万円”給与を上乗せ支給しますよ」というメッセージを戦略的に発信してくる可能性もなくはないかもしれません。

そうなると、特に小規模事業者等においては人材流出が促進される可能性も考えられ、ますます厳しい経営を余儀なくされる事業者も出てきてしまう、ということも考えられるのではないでしょうか。

それでは懸念点の最後、4点目についてです。

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【懸念その4】
他職種の方(看護職員やケアマネ、生活相談員)の中から「介護職に戻してほしい」という要望が出てくるかもしれない。

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現時点においても介護職員の待遇は生活相談員やケアマネージャー等、異なる専門職のそれらに肉迫してきているケースも少なくありません。そのような中、今回の新加算が更に上乗せされることで、地域・事業者によっては待遇の“逆転現象”が発生するかもしれず(=ケアマネや生活相談員等の専門職より“経験・技能のある介護職員”の給与が高くなる)、場合によっては10年以上の介護職経験を持ち、かつ、介護福祉士資格を有しているケアマネージャーや生活相談員から「介護職に戻りたい」或いは「給与をもっと上げて欲しい」という要望が出てくる可能性も考えられるかもしれません。

無論、仕事に対する誇りややりがい等、待遇面だけで単純にはかられる話ではないかもしれませんが、例えば家庭環境的に生活責任を高く負っている方(容易に想像できるのはシングルマザーのような方?)の場合には特に、そのようなケースも想定されるのではないでしょうか。




冷静かつ早めの思考と準備を

以上、現時点での最新情報、及び事業者が感じられている懸念点の代表例についてお伝えしてまいりました。更なる詳細情報が今年度末までに発出されることを含め、今後も引き続きの情報収集が必要となる「特定処遇改善加算」ですが、少し考えただけでも様々留意しなければならない点が見えてくる等、事業者にとっては正に“諸刃の剣”的な施策であると言えなくはないのかもしれません。

経営者としては特定処遇改善加算取得後のメリット・デメリットを自社の現状に合わせて具体的に整理しつつ、どのように対応していくか?について、早め早めに頭を働かせておく&準備を進めていくことが重要だと言えるでしょう。私たちも今後、引き続きの情報収集を含め、新たな視点が得られ次第、皆様に向けて発信してまいります。

※上記内容の参照先URLはこちら

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000202420_00014.html



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